日本管理会計学会
The Japanese Association of Management Accounting
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九州部会

2017年度第3回(第53回)九州部会開催記

2017年11月13日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■ 日本管理会計学会2017年度第3回(第53回)九州部会が、2017年11 月11 日(土)に中村学園大学(福岡市城南区)にて開催された(準備委員長:水島多美也氏(中村学園大学))。今回の九州部会では、関西・九州からご参加をいただき、10名近くの研究者及び商業高校教諭の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。また、管理会計のほかに国際経営学の分野の研究者の参加によって、分野横断的な議論が研究会や懇親会で交わされた。201711131.JPG
 なお本部会は、九州部会の先生方が中心となって進められている日本管理会計学会スタディグループの報告(研究課題「地域中小製造企業の管理会計・原価計算活用実態解明と経営改善への接続に関する研究」、研究代表者:宮地晃輔氏)の中間報告という位置づけである。当該スタディグループでは、長崎・熊本・沖縄といった九州の中小企業の管理会計実践をインタビュー調査や参与観察、アクションリサーチなどを行っている。

■■ 第1 報告は、宮地晃輔氏(長崎県立大学)より、「中小企業における管理会計の実践レベルに関する研究-長崎県での調査を基礎として-」と題する報告が行われた。本報告は、長崎県の産業用機械装置メーカーF社の経営者が、どのような考えやプロセスに基づいて自社に適合する管理会計システムの構築を図ったかを明らかにした上で、そこから導出される意義について論究したものである。201711132.JPG
 F社では、2013年にSQLサーバー・マネジメントシステムを導入して、自社開発によって、管理会計システムの構築と業績評価指標等の「見える化」を実現させている。報告では、受注から製造までのプロセスをオープンして工事番号ごとに損益分析が可能となっていることや、伝票入力ルールが徹底されることで収支・損益情報の信頼性が向上したことなどが紹介されている。

■■ 第2報告は、吉川晃史氏(熊本学園大学)より、「中小企業における管理会計の実践レベルに関する研究-熊本県での調査を基礎として-」と題する報告が行われた。本報告は、中小企業が経営改善目的で管理会計情報を含めた経営情報をいかに利活用できるようにするのかについて、ビジネス・エコシステム(複数の企業や団体が、それぞれの技術や強みを生かしながら業界の垣根を越えて連携し共存共栄する仕組み)の観点から明らかにすることを目的としたものである。201711133.JPG
 報告では、熊本県中小企業家同友会に対する参与観察や入手資料に基づき、当該同友会で開催された「経営指針を創る会」(全6回)を中心に、セミナー参加企業の現状や課題が紹介された。報告者は、参加した中小企業では経営理念や経営方針、経営計画などを実際に提示することに至ることの難しさゆえに、「経営指針作成運動を推進するリーダー」を育てることを重視していることや、同友会には「受講者アンケートの実施」などフィードバックが求められていることなどを説明している。

■■ 第3報告は、木村眞実氏(熊本学園大学)より、「中小企業における管理会計の実践レベルに関する研究-沖縄県での現場改善-」と題する報告が行われた。本報告は、沖縄県で自動車解体業を営む中小企業を対象に、破砕・選別・洗浄工程においてMFCAバランス集計表を作成して工程改善を行うまでの一連のプロセスが、報告者の現地調査と入手資料から提示された。201711134.JPG
 調査対象企業では、使用済自動車由来の樹脂部品を回収・破砕・選別・洗浄し、樹脂リサイクルメーカーに原料として提供するための技術開発を行っており、採算がとれるような樹脂リサイクルの実現を目指している。報告者は、当該工程を対象にMFCAバランス集計表を作成して工程改善が行われたことを紹介している。報告者は、当該企業が高磁力ダストや水槽ダストで発生するロスを減らす取り組みなど工程改善に着手するようになった要因の一つには、担当者に負の製品割合を「kg当たりの金額」で提示したことが影響していることを指摘している。

■■ 研究報告会の後、開催校のご厚意により大学近隣の居酒屋で懇親会が開催され、実りある交流の場となった。

2017年度第52回九州部会&日本会計研究学会九州部会第100 回記念大会 開催記

2017年7月31日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■2017072901.JPG 日本管理会計学会2017年度第52回九州部会が、日本会計研究学会九州部会第100 回記念大会との共催で2017年7 月29 日(土)、九州大学(福岡市東区)にて開催された(準備委員長:大下丈平氏(九州大学))。今回の合同部会では、九州以外に関東や関西からもご参加をいただき、50名近くの財務会計・管理会計・税務会計の研究者、実務家、大学院生の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■2017072903.JPG  第1報告は、陳●氏[●は、かねへんにりっとう](九州大学大学院博士課程)より、「自己の信用リスクの変化に起因する金融負債公正価値の変動額を巡る会計処理」と題する研究報告がなされた。本報告は、その他包括利益に計上された自己の信用リスク(報告企業の信用状態)の変化に起因する金融負債の変動額をリサイクリング(実現時に区別された未実現利益を当期純利益に移し替える処理)すべきかについて、FASBとIASBの会計処理方法の比較から明らかにしようとしたものである。
報告者の分析によれば、利益の見方の視点からは、FASBは純利益と包括利益の両方を重視する立場を採用しており、IASBは包括利益の方をより重視する立場を採用している。この相違により、FASBは全面リサイクリングという主張につながり、IASBはリサイクリングする項目を取捨選択すべきという主張につながることを指摘している。

■■2017072904.JPG 第2報告は、黒岩美翔氏(九州大学大学院博士課程)より、「フランスにおける社会的責任戦略コントロールの一考察」と題する研究報告がなされた。本報告は、企業の経済性と社会性の同時追求や、長期的かつ持続可能な価値創造を可能にする「CSR(企業の社会的責任)戦略コントロール」の取り組みについて、Moquet(2010)で紹介されているフランスのダノンとラファージュの2社を題材にして明らかにしようとしたものである。
報告では、ダノンとラファージュのCSR戦略コントロールに関する具体的な制度化プロセスが明らかにされた。報告者によれば、2社の共通点として、会社独自の基準・方針を規定しつつも地方文化に合った目標・実践、行動計画が決定されていることや、イントラネットを活用してベストプラクティスの共有が図られていることなどがあげられる。また、2社の相違点としては、コミュニケーションの場として、ダノンは従業員を中心に位置づけているのに対し、ラファージュは地域住民を巻き込んでいることなどが紹介されている。

■■2017072905.JPG 第3報告は、小谷学氏(熊本学園大学)より、「利益率の分布形状を決定する要因は何か?」と題する研究報告がなされた。本報告は、ROAやROIなどの利益率に関する指標が企業間で格差が生じていることについて数理的な説明が行われていないことに注目し、利益率がどのような分布形状になるのか、その要因は何か、リスクとリターンの規則性は成立するのかを明らかにしようとしたものである。
報告では、Hamada(2004)の個人間の所得分布発生モデルをもとに予測モデルを構築し、その検証を行っており、1980年から2011年までの東証1・2部の企業(金融業除く)の決算データ(20,608サンプル)の総資本利益率を分析した結果が示された。分析結果では、当該利益率は対数正規分布に類似した分布に従うこと、利益率の分布形状は企業の投資意欲により決定されること、投資意欲は投資のリターンとリスク回避度の影響を受けることが明らかにされた。また、当該データの回帰分析を行った結果、利益率についてハイリスク・ハイリターンの関係があることも明らかにされている。

■■2017072906.JPG 第4報告は、篠原巨司馬氏(福岡大学)・福島一矩氏(中央大学)・足立洋氏(県立広島大学)より、「管理会計の整備プロセスに関する研究:A 社のケーススタディに基づいて」と題する研究報告がなされた。本報告は、安定的・持続的経営を実現できている組織において、管理会計の変更(導入・調査)がどのように行われているのかについて、建築資材の製造・販売を主要事業とするA社を対象としたケーススタディである。
報告では、安定的な業績運営を行ってきたA社においても、創業者の退陣といった組織環境の変化により、交渉ベースで決定されていた内部振替価格に基づく拠点別の利益率の報告方法が見直されたことや、拠点間の利益の平準化を防ぐために売上原価率のシステムを自動化させたこと、また、売上の計上基準が工事進行基準から工事完成基準に変更されたことなどが、報告者のインタビュー調査や内部資料などから提示された。

■■2017072907.JPG 第5報告は、末永英男氏(熊本学園大学)より、「法人所得の特質と税務会計」と題する研究報告がなされた。本報告は、大竹貿易事件(最高裁平成5年11月25日判決)以降、法人税法22条4項の収益の額、および原価・費用・損失の額に法人税法独自の解釈基準が示されるようになっていることに着目して、税務会計の計算対象である「課税所得」の前概念である「所得」や「法人所得」の検討を行うことで、税務会計の特殊な位置付けを明らかにしようとしたものである。
報告者によれば、「課税所得」は、「企業利益」から導かれるのではなく、「法人所得」の要請を取り入れた所得であると捉えられている。そして租税法律主義の下、公法的側面と私法的側面の両面から考察されなければならない租税法において、固有概念としての「法人所得」を確認したうえで、さらに「課税所得」を算定するのが税務会計の使命になると結論付けている。

■■2017072902.JPGのサムネイル画像 研究報告会の後、開催校のご厚意により大学生協にて懇親会が開催され、実りある交流の場となった。

 

 

 

2017年度第31回関西・中部部会&第51回九州部会 開催記

2017年5月 8日|足立俊輔 (下関市立大学)


■■ スライド1.JPG日本管理会計学会2017年度第31回関西・中部部会および第51回九州部会が、2017年5月6日(土)に西南学院大学(福岡市早良区)にて開催された(準備委員長:高野学氏(西南学院大学))。今回の合同部会では、関西・中部・九州以外に関東からもご参加をいただくなど、20名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。また研究報告に先立ち、関西・中部部会役員会が開催された。

■■ 第1報告は、足立俊輔氏(下関市立大学)より、「病院BSCにおける医療安全の位置づけ」と題する研究報告がなされた。本報告は、病院BSCが医療安全にどのように貢献しているのかを文献レビューに基づいて明らかにすることを目的としたものである。スライド2.JPG
 報告では、医療安全に関連した記述(医療安全項目)が病院BSCに記載された論文をレビューした結果が示され、戦略目標に医療安全項目が記載されている視点は「業務プロセスの視点」と「顧客の視点」が大半であること、「業務プロセスの視点」に記載されている医療安全項目は「医療安全管理体制の強化」の記載数が多いこと、また、重要成功要因や業績評価指標に記載される医療安全項目は「インシデント・アクシデント報告数」の記載数が多いことなどが示された。

■■ 第2報告は、浅川哲郎氏(九州産業大学)より、「米国のオバマ医療制度改革における病院マネジメントシステムの変化」と題する研究報告がなされた。本報告は、新たに就任したトランプ大統領の医療制度改革が、オバマ政権下で立法化された医療保険制度改革法(ACA)をどう継承していくのか、そして、そのことが病院の規模や組織にどのような影響を与えるのかを、報告者の現地調査に基づいて明らかにしようとしたものである。スライド3.JPG
 報告では、トランプ政権下においてもオバマ医療制度改革が継続する可能性が高いこと、医療組織は機能別に分化する、いわゆる「モジュール化」が進む可能性があること、そして、近年浸透しつつある「コンビニエント・ケア」には「アージェント・ケア・センター(総合診療と救急医療の中間医療組織)」と「リテール・クリニック(簡易的な予防医療サービスを提供する医療組織)」の2種類が存在していることが紹介された。報告者によれば、こうした一連の新しい動きは、医療のコストを減少する可能性を秘めていると指摘している。

■■ 第3報告は、島吉伸氏(近畿大学)より、「プロジェクト特性がマネジメント・コントロール・システムに与える影響-コントロール・パッケージの視点から-」と題する研究報告がなされた。本報告は、同一の組織において異なる特徴を持つプロジェクトが実施された場合、利用されるマネジメント・コントロール・システム(MCS)に与える影響をコントロール・パッケージの視点から明らかにすることを目的としたものである。報告では、診療科別原価計算とISO9001がプロジェクトとして採用されている医療組織のケースが紹介された。スライド4.JPG
 当該ケースでは、診療科別原価計算が含まれるMCSでは、医師が組織的価値に配慮させるための信条システムを生み出すために、インタラクティブ・コントロール・システムや診断的コントロール・システムが機能していること、そして、ISO9001が含まれるMCSでは、プロジェクト推進時においては信条システムが機能しており、プロジェクトの定着と効果発揮の場面ではインタラクティブ・コントロールと診断的コントロールが機能していることが示された。

■■ 第4報告は、三浦徹志氏(大阪経済大学)より、「鉄工団地中小企業における経営課題と管理会計思考の適用研究-金属加工業の設備投資、品質・人材・在庫問題を事例として-」と題する研究報告がなされた。本報告は、元請企業への依存度を見直すことや、自立的事業割合を増やそうとする中小製造業にとって、理にかなった経営管理・管理会計とは何かについて、事例研究に基づき明らかにしようとしたものである。スライド5.JPG
 報告で紹介されたA社は、金属部品加工・メッキ一貫生産を事業として行っており、近年の設備投資案として亜鉛のメッキ工程へのロボット・システム導入による工程の自動化やIoT(Internet of Things)化を進められていることが、業界の状況と共に丁寧に説明された。報告では、熟練技術が必要なメッキ工程にロボットによる自動化を行った場合のシミュレーションの計算方法や、IoTシステムを導入した場合のデータ入力時に必要な原価計算や管理会計に必要とされるデータについて、現場のヒアリング調査に基づいて意見が述べられた。

■■ 研究報告会終了後、九州部会の総会が行われた。総会では前年度の会計報告と今年度の九州部会開催の議題が出され、双方とも承認を得た。今年度の九州部会は、第52回大会は7月29日に九州大学にて日本会計研究学会九州部会と合同開催の予定であり、第53回大会は中村学園大学にて11月に開催予定である。
 報告会終了後、開催校のご好意により、懇親会が西南クロスプラザ(ゲストルーム)にて開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり、盛況のうちに大会は終了した。

2016年度第3回(第50回記念大会)九州部会 開催記

2016年11月25日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■ 日本管理会計学会2016年度第3回九州部会(第50回記念大会)が、2016年11月19日(土)に九州大学(福岡市東区)にて開催された(準備委員長:大下丈平氏(九州大学))。今回の九州部会では、関西・九州以外に関東からもご参加をいただくなど、総計20名を超える研究者や実務家、大学院生・学部学生の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。
 本大会では統一論題のテーマとして、「グローバリゼーションの下での管理会計の課題と展望―不確実性・モノづくり・CSR―」を掲げ、不確実性の高い情勢下での企業経営の土台をなす管理会計やマネジメント・コントロールのあるべき姿を追究する形で報告がなされた。

■■  第1報告は、今井範行氏(名城大学)氏より、「管理会計はどこまで企業現場の競争力を練磨し得るか?―実務視点からの考察―」と題する研究報告がなされた。本報告は、上記の統一論題の趣旨を踏まえ、「管理会計はどこまで企業現場の競争力を練磨し得るか?」という点について、企業経営の視点、とりわけトヨタの実務的視点から考察したものである。
 報告では、近年のトヨタの動きとして、大規模な組織改編が行われたことや、ハイブリッド車の販売台数の伸び悩み、それにカーシェア・ライドシェアの勃興などの概略が説明され、企業経営の現場ではグローバリゼーションの意味を広く捉えて、市場統合の深化、金融資本の蓄積、先進国成長率の下方屈折、人の価値観の成熟化、これら4つの特性を意識して経営を行わなければならないと結論付けている。そして、試論として、「潜在利益」と「顕在利益」および「想定内リスク」と「想定外リスク」の概念を提唱された。

■■ 第2報告は、西村明氏(別府大学客員教授、九州大学名誉教授)より、「不確実性・リスクの中で管理会計を考える」と題する研究報告がなされた。本報告は、管理会計の基礎概念として、「もの作り」・「科学的管理」・「調和」の3つに着目して、20世紀初頭に提唱された企業理論や企業家理論のなかでの経営管理と管理会計について考察を加えたものである。
 報告者は、「不確実性」は企業経営に強い影響を与えているばかりか、スパイラル現象を強めていることに言及し、「管理」や「会計」、それに「管理会計」もまたその中で成長しており、その運用を誤るとスパイラル現象を助長してしまうことを指摘する。報告では、当該状況下においても、「環境やサプライチェーン、安心安全、リスクに配慮した原価企画」や「社会関連的な管理会計」が企業界からも生まれていることに着目して、理論の垣根を超えた「調和に向かう管理会計システム」を構築し、またその意味の重要性を認識すべきであると結論付けている。

■■ 第3報告は、田中雅康氏(広島都市学園大学、東京理科大学名誉教授)より、「日本の主要企業の節目管理」と題する研究報告がなされた。節目管理とは、開発設計の主要な区切り(節目)において、原価企画の責任者が開発設計諸目標の達成可能性を評価し、「製造活動に入る前に開発設計諸目標を達成させる管理」のことを意味する。
 報告者によれば、原価企画における節目管理はフィード・フォワード・コントロール(FFC)であっても、日本の主要な企業でも十分に行われているとはいえない。しかし、報告者の研究チームが2012年に実施したアンケート調査によれば、原価企画を長期間導入してきた企業では、FFCの充実度は高まっていることが判明している。その上で報告者は、望ましい節目管理を行うためには、開発設計者と原価企画推進チームの有機的な活動や技術、それに原価に関する新しい情報の入手と共有が不可欠であると結論付けている。

■■ 各報告者の報告の後、3人の報告者を座長が囲む形で円卓討論が行われた(座長:大下丈平氏)。円卓討論では、座長やフロアからの質問について報告者がそれぞれの立場から意見が述べられ、統一論題のテーマを再考する形で討論は締めくくられた。
 また研究報告会の後、大学近くのホテル(福岡リーセントホテル)にて懇親会が行われ、実りある交流の場となった。懇親会では、50回大会を記念して野瀬誠一先生(元日本経済大学)からご祝儀をいただき、最後は記念撮影をして和やかな雰囲気で記念大会は終了した。
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2016年度 第2回フォーラム(第49回九州部会共催)開催記

2016年9月11日|篠原巨司馬 (福岡大学)

forum2016-2-1.jpg 2016年7月30日、福岡大学において「管理会計の実務に与えるインパクト」というテーマのもと九州部会との共催で行われた。結城秀彦氏(監査法人トーマツ)、吉原清嗣氏(Development Academy of the Philippines Visiting Fellow,The Vietnam National University Visiting Fellow,京都大学大学院)、宮地晃輔氏(長崎県立大学)の3名から報告が行われ、最後に大下丈平氏(九州大学)を座長にパネルディスカッションが行われた。

■第1報告 結城秀彦氏(監査法人トーマツ)
 「管理会計の財務諸表監査に与えるインパクト-管理会計が関連する監査の諸側面-」
 第1報告ではまずforum2016-2-2.jpg、管理会計が財務諸表監査においてどのようなインパクトを持っているのかという点について報告された。財務諸表監査にとって管理会計は、会計処理・開示基準としての側面、監査手続における手法の活用としての側面、そしてリスク・アプローチにおける業績評価会計の勘案としての側面があるとし、それぞれについて説明がなされた。
 会計処理・開示基準については原価計算基準の実態主義と会計ビッグバン以降のルール主義とで乖離が起こっているが、実態主義で妥当性が判断されていることにより、基準の見直しに対するインセンティブが働かず、GAAPの一部を構成しているとの認知の低下をもたらしているのではないかとの懸念が示された。手法の活用としては重要な虚偽表示を発見する際に、伝統的財務比率分析、キャッシュ・コンバージョン・サイクル、損益分岐点分析・投資の経済性計算などが行なわれていることが説明された。リスク・アプローチにおける業績評価会計の勘案では監査における虚偽表示リスク要因・統制環境としての管理会計のインパクトについてまとめられた。管理会計は虚偽表示リスクを評価する際の統制環境として捉えられ業績評価制度によってインセンティブが発生するために注目する必要があるとした。

■第2報告 吉原清嗣氏(Development Academy of the Philippines Visiting Fellow,The Vietnam National University Visiting Fellow,京都大学大学院)
 「日本の地域金融システムの他国への運用可能性について-中小企業の育成と管理会計の視点から-」forum2016-2-3.jpg
 第2報告では、中小企業の育成を担ってきた地域金融システムの他国で運用可能性についての研究が報告された。他国への適用可能性を検討するために、日本的金融構造の性質が歴史的に整理され、その後にフィリピン、ベトナムの状況と比較され、日本的金融システムの可能性について発表された。
 ?日本の金融実務は1997年から2006年ほどまでの間に転換点を迎えたとし、近年では「長期継続する関係の中から、借り手企業の経営者の資質や事業の将来性等についての情報を得て、融資を実行するビジネスモデル」であるリレーションシップバンキングの推進が金融庁主導のもと行われている。しかしながら、京都の地域金融機関ではかねてよりリレーションシップバンキングに取り組んでいた。地域金融機関の幹部によると日本独自の型があり、それは顧客が発展するために援助することであり、信用をつける術を教えたり、顧客に不足するものを教えたりして最終的な行為として貸出があるというようなものであった。そして、そのような金融システムこそ、発展途上のベトナム、フィリピンの発展に寄与する可能性があると主張された。

■第3報告 宮地晃輔氏(長崎県立大学)
 「中小製造企業における管理会計の導入実態に関する研究-長崎県佐世保地域での調査を基礎として-」forum2016-2-4.jpg
 第3報告では、長崎県佐世保地域に所在する中小製造企業における管理会計の導入実態についての調査研究が報告された。本調査においては、「長期経営計画・中期経営計画・短期利益計画から接続する予算編成が、中小製造企業において実際にどのレベルで行われているのかという点」と「予算管理の中で見られる管理会計とリンクした原価計算が実態としてどのレベルで行われているかという点」を意識して行われた。またデータは九州北部税理士会に所属する税理士法人一法人への訪問調査と佐世保市に所在する機械器具製造企業へのインタビュー調査によって得られたものを用いている。
 税理士法人への調査の結果、中小製造業の管理会計導入は実態として脆弱なものであることが示された。中長期の経営計画や短期利益計画を作成している企業は稀であり、製品ごとの原価計算も難しく、目標値を設定したり業績指標を利用したりする経営者も稀であるとの結果であった。一方で、機械器具製造企業への聞き取り調査では社員全員で会計情報を共有し社員のモチベーションを高めたり、予算管理制度を導入していたりと高度な管理会計が導入されていたことが示された。中小企業であっても管理会計能力が高まるパターンとして、代表取締役の会計教育歴や職歴が挙げられた。またこのような好例を地域的に伝播させることの可能性が論じられた。

■パネルディスカッション 大下丈平氏(九州大学)、結城秀彦氏、吉原清嗣氏、宮地晃輔氏
 大下丈平氏の司会でパネルディスカッシforum2016-2-5.jpgョンが行われた。まず、大下氏より3報告の総括が行われ、その後にフロアーからの質疑応答を受け付ける方式で進められた。3報告とも、バックグラウンドの違う立場であったが、日本経済の大きなトレンドのもとで、どのような課題があるのかという点で共通しており、このディスカッションでも、管理会計に限定せず、現状の課題に対して我々管理会計研究者はどのように考えるのかという視点から議論をしていきたいとの座長の宣言のもとディスカッションが進められた。3報告とも企業実務の具体的事例が多かったため、フロアーからの質問も多く非常に活発な議論が行われた。

 なお、本フォーラムの参加者数は43名であった。

2016年度 第1回(第48回) 九州部会開催記

2016年5月18日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■ 日本管理会計学会2016年度第1回(第48回)九州部会が、2016年5月14日(土)に下関市立大学(下関市大学町)にて開催された(準備委員長:島田美智子氏(下関市立大学))。今回の九州部会では、関西・九州以外に関東からもご参加をいただくなど、10名近くの研究者や大学院生の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■  第1報告は、高梠真一氏2016kyuusyu1-1.jpg(久留米大学)より、「管理会計の生成・発展における投資利益率の役割」と題する研究報告がなされた。本報告は、19世紀中期の鉄道会社であるウェスタン鉄道、19世紀後期の鉄鋼会社であるカーネギー・スティール社、20世紀初期の火薬会社であるデュポン火薬会社、および20世紀中期の化学会社であるデュポン社を事例として取り上げ、各企業において投資利益率がどのように利用され、いかなる内容・意義をもっていたかを検証・考察したものである。
 報告者は検証・考察の結果、投資利益率概念については、その分母と分子の構成要因が企業環境や利用目的に適合して変化してきたこと、および、その投資利益率は元来、株式投資ではなく、意思決定と業績評価という経営管理のために管理会計の技法・概念として利用されてきたと結論づけている。

■■ 第2報告は、足立俊輔氏2016kyuusyu1-2.jpg(下関市立大学)より、「クリニカルパスを介した病院TDABCの有用性について」と題する研究報告がなされた。本報告は、キャプラン=ポーター(Kaplan, R. S. & Porter, M. E. (2011))が、"How to solve the cost crisis in health care"をHBRで発表して以来、多くの病院でTDABCが試験的に導入されていることや、病院で標準診療計画を意味する「クリニカルパス」を活用することで病院TDABC導入の適切性確保や負担軽減できると指摘されていることに着目して、病院TDABCとクリニカルパスの関連性を文献レビューを通じて整理したものである。
 報告者はレビューの結果、クリニカルパスは、病院TDABCのプロセスマップ作成時や、調査対象となる診療行為を選別する場合に用いられていることを指摘し、その背景にはコスト・ベネフィットの観点から病院全体にTDABCを導入することが困難となっていることに言及している。

■■ 第3報告は、水島多美也氏(中2016kyuusyu1-3.jpg村学園大学)より、「時間管理会計論とその発展」と題する研究報告がなされた。本報告は、管理会計や原価計算の個々のケースでは「時間」について一定の議論がされているとはいえ、どの時間の、どの管理会計技法を問題にしているかについては共通認識がないことに着目し、時間と管理会計・原価計算の関係性について体系的な整理を試みたものである。なお当該報告は、報告者が昨年度出版した『時間管理会計論』の成果に基づいたものである。
 報告では、時間の視点からみた管理会計・原価計算の先行研究を、ビジネスプロセス、組織単位、期間、頻度の4つから分類整理を行った結果や(第2章)、標準原価の能率向上による過剰在庫の発生といった「時間からみた伝統的会計の問題点」(第4章)、業績評価会計と意思決定会計における時間概念の体系的な整理(第10章)などが、トヨタ生産システムやアメーバ経営と関連させながら紹介された。

■■ 研究報告会の後、臨時総会が開催された。臨時総会では、前年度の会計監査報告と今年度の九州部会開催が情宣された。今年度は、第2回の九州部会(第49回大会)を7月30日(土)に福岡大学で管理会計フォーラムと共同開催し、第3回の九州部会(第50回記念大会)を11月19日(土)に九州大学で開催する予定である。また、第50回記念大会にあたって部会開催補助を増額することとなった。
 臨時総会後、大学生協にて懇親会が開催され、実りある交流の場となった。

2015年度第3回(第47回)九州部会 開催記

2015年11月 9日|足立俊輔 (下関市立大学)

2015kyushu3.png 日本管理会計学会2015年度第3回(第47回)九州部会が、2015年11月7日(土)に福岡大学(福岡市城南区)にて開催された(準備委員長:飛田努氏(福岡大学))。今回の部会では、九州以外に中部・関東からもご参加をいただくなど、15名近くの研究者や大学院生の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

 第1報告は、黒岩美翔氏(九州大学大学院博士課程)より、「社会責任戦略コントロールに関する一考察:全社的リスクマネジメントERMの可能性」と題する研究報告がなされた。本報告は、財務的コントロールと社会的コントロールの比較考察を通して、マネジメントコントロールやガバナンスシステム、また全社的リスクマネジメントがどこへ向かうのかについて、その手掛りを得ることを目的としている。
 報告では、Moquet(2010)に基づいて、社会的責任戦略コントロールを行っているフランスのダノン社の事例を通じて、社会的責任の4つの特徴を分析しながら理論的提案を行っている。報告者は、Moquet(2010)を踏まえた理論的提案を踏まえて、企業が社会的責任戦略のコントロールを実現する方策として「CSRを考慮したERM」を提案している。

 第2報告は、木村眞実氏(沖縄国際大学)より、「自動車解体業への試案MFCAー樹脂を対象としてー」と題する研究報告がなされた。本報告は、MFCAを使用し、静脈産業の生産プロセスには改善の可能性があることを示すことを目的としたものである。
 報告では、静脈産業である自動車解体業A社を対象にして、安城・下垣(2011)に基づいて作成された「試案のMFCAバランス集計表」のエクセルの計算例や、リサイクルフロー図が示された。A社では従来、使用済自動車由来の樹脂部品(バンパーなど)は代替加炭材の原料として処理されていたが、この樹脂部品を樹脂ペレットという形でマテリアルリサイクルを行うという生産プロセスの改善がされている。報告者は、試案のMFCAバランス集計表を作成した結果、こうした生産プロセスの改善の効果が金額や物量ベースで「見える化」できたことを示している。

 第3報告は、新茂則氏(中村学園大学)より、「日本版スチュワードシップ・コードとROE投資」と題する研究報告がなされた。本報告は、企業の収益向上に向けた政策と株価動向の実証分析を行うことを目的としている。
 報告者は、日本の株式市場の最大の投資家は外国人投資家であること、ROEについて経営者と投資家の意識のズレがあること、JPX日経インデックス400(JPX400)の創設により企業経営者の意識にROE経営に重きをおく環境が整ったことなどを問題意識に置いている。報告では、quickやヤフーファイナンスのデータの分析結果が示され、東証時価総額上位企業のROEとPBRには正の相関(0.68)がみられること、JPX400と為替レートは強い正の相関(0.88)があること、JPX400の投資収益率のパフォーマンスはベンチマーク(TOPIX)よりも高いことが示された。

 第4報告は、西村明氏(九州大学名誉教授)より、「管理会計におけるデリバティブとものづくり」と題する研究報告がなされた。本報告は、リスク一般ではなく、最も現実的で企業経営に影響するリスクと管理会計との関係を明らかにすることで、現代における管理会計の特徴と問題点の解明を目的としている。
 報告者は、Nishimura(2015)で提案したCOLCモデル(Comprehensive Opportunity and Lost Opportunity Control Model)は強い金融経済の中で、リスク管理や持続的な収益性に確報する方法であるとしても、デリバティブの投機性を処理することはできないため、企業経営と管理方法がその社会的な運用において、社会との対話や批判を組み入れ、公正かつ客観的なものでなければならないとしている。その意味での管理会計は、国際会計基準、とりわけコーポレートガバナンスや内部統制と強い連携を持つと共に、公開制・透明性・管理責任制をより強く意識し、システムとしてそれらを確立しなければならないと結論づけている。

■ 報告会終了後には開催校のご厚意で、大学周辺の居酒屋で懇親会も開催され,実りある交流の場となった。

2015年度 第2回(第46回) 九州部会 開催記

2015年8月 4日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■ 日本管理会計学会2015年度第2回(第46回)九州部会が、2015年7月25日(土)に九州産業大学(福岡市東区)にて開催された(準備委員長:浅川哲朗氏(九州産業大学))。今回の部会では、九州以外に関西・中部からもご参加をいただくなど、10名近くの研究者や実務家、大学院生の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■  第1報告は、田尻敬昌氏(九州国際大学)より、「組織スラックとフィードフォワード・コントロール―スラック形成とその戦略的展開」と題する研究報告がなされた。本報告は、組織スラックをフィードフォワード・コントロールの観点から再検討することを目的としたものである。
 組織スラックの機能には、戦略的行動やイノベーションを促す機能があり、例えば、組織が利害対立関係下にあっても、組織スラックを利用することでイノベーションが起こる可能性がある。報告者は、フィードフォワード・コントロールにおいては見積値と目標値の差異を解消することに焦点があてられているものの、組織スラックの機能に焦点をあてた場合には、当該差異は解消するのではなく、「合意形成が得られるであろう次善的に適切な値」に設定すべきとして、会計情報の指標間において対立関係が生じていることに言及している。

■■ 第2報告は、緒方光行氏(福岡常葉高等学校)より、「キャリア教育の視点に立った管理会計の指導法について」と題する研究報告がなされた。本報告は、平成25年度の高等学校学習指導要領の改訂により、新たに導入された「管理会計」の現場での現状と課題を説明した上で、キャリア教育で重視されるようになった観点別評価の実態を紹介したものである。
 観点別評価の導入背景には、検定試験合格の勉強に偏重しすぎている現状が問題視されていることがあり、観点別評価を導入することにより、会計指標の理解力や表現力が求められるようになっている。報告では、話し合い活動としてKJ法や、発表方法としてワールドカフェ方式など、様々な取り組みが紹介されているものの、管理会計では、高校生を対象にした管理会計の教材が不足している現状から、高大接続などによる指導の充実が求められていることがあげられている。

■■ 第3報告は、招聘講演として、今井範行氏(名城大学)より、「デュアルモード管理会計とプロアクティブスラック―予算スラックの順機能性に関する一考察―」と題する研究報告がなされた。本報告は、逆機能的な予算スラックとは異質の順機能的な予算スラックとして、トヨタ的業績管理会計の事例を取り上げ、その要諦について「プロアクティブスラック」として概念化をはかるとともに、その管理会計的意義について考察を加えたものである。
 トヨタなどグローバルに事業展開する企業では、企業外部の想定2015kyusyu2-1.jpg外の潜在リスクを予見することが難しい。そのためトヨタでは、為替レートや販売数量など収益ドライバーの前提を「保守的」な水準に置き換えた利益計画を提示して、その保守的に置き換えた分の利益減少分を、追加的なコスト低減策の策定でカバーすることが求められている。報告では、当該コスト低減策により、順機能的な予算スラックとしてプロアクティブスラックが形成されていることが、設例や図表を用いて紹介されている。

2015年度 第1回(第45回)九州部会 開催記

2015年5月11日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■ 日本管理会計学会2015年度第1回(第45回)九州部会が、2015年4月18日(土)に中村学園大学(福岡市城南区)にて開催された(準備委員長:水島多美也氏(中村学園大学))。今回の部会では、九州以外に関西・関東からもご参加をいただくなど、10名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■  第1報告は、谷守正行氏(専修大学)より、「サービス業における原価計算に関する研究―銀行のポストABCアクションリサーチを通して―」と題する研究報告がなされた。本報告は、わが国の銀行で導入されてきたABCによって算出される顧客別情報の問題点を解決するために、より現場感覚に合う顧客別情報を提供するABCの配賦方法をアクションリサーチに基づいて提示することを目的としたもの2015kyuusyu1-1.jpgである。
 従来の銀行ABCは、業務量が配賦基準に設定されており、事務をこなせばこなすほどコストになってしまうことに対して現場の違和感が高まっていた。そこで報告者は、顧客の関連性情報(年齢や職種、契約状況など)に基づいて必要資源量(窓口・ATM・ネット)と関連させて顧客別原価を算出する配賦手法を提示している。報告では、当該手法によるABCのアクションリサーチの結果が示され、関連性情報に基づく配賦手法は現場の納得感が高く、原価計算担当者の作業負担が軽減されたことが明らかにされた。

■■ 第2報告は、宮地晃輔氏(長崎県立大学)より、「造船業における人的資産・組織資産の高度化への取組みと課題」と題する研究報告がなされた。本報告は、長崎県佐世保地域で行われている造船人材活性化への取り組みについて、その現状と課題を明らかにしようとしたものである。2015kyuusyu1-2.jpg
 報告では、段階的な人口減少により地域衰退が懸念される長崎県の現状と、地域雇用の側面から造船業の再浮揚の必要性が説明された上で、新造船事業の競争力を高めるための人材育成が求められていることが示された。報告者は、日本の新造船事業の外注化率は約85%であることから、地元協力先企業との連携強化も国際競争力を高める上で必要不可欠であり、こうした現状を経営者階層(地元地方金融機関からの人材など)に理解させるための意識改革をサポートしていくことが課題であると指摘している。

■■ 第3報告は、西村明氏(九州大学名誉教授)より、「企業リスクマネジメントと機会/機会原価統制システム」と題する研究報告がなされた。本報告は、近年グローバル企業が抱えるリスクに対して管理会計が果たすべき役割について、利益機会とリスク管理の構造から明らかにしようとしたものである。2015kyuusyu1-3.jpg
 報告では、リスク管理と管理会計の有機的な統合を実現するための機会・機会原価統制システムが提示され、当該システムによる企業価値創造とガバナンスの側面から最適利益を算出するための統制プロセスが、図表や設例によって提示された。報告者は、これからの管理会計には、事前行為的視点を強化しなければならないことや、リスク管理の透明性を高めるために財務会計との融合が求められていること、そして社会経済的な視点が必要とされていることが指摘された。

■■ 研究報告会の後、総会が行われた。総会では前年度の会計報告と今年度の九州部会開催の議題が出され、双方とも承認を得た。今年度の九州部会については、第46回大会は7月25日に九州産業大学にて、第47回大会は福岡大学にて11月に開催予定である。報告会終了後、開催校のご厚意により懇親会が開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり、盛況のうちに大会は終了した。

2014年度 第3回(第44回)九州部会 開催記

2014年12月 2日|下関市立大学 足立俊輔

■■ 日本管理会計学会2014年度第44回九州部会が、2014年11月22日(土)に西南学院大学(福岡市早良区)にて開催された(準備委員長:高野学氏(西南学院大学))。今回の部会では、九州以外に関西・関東からもご参加をいただくなど、20名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。

■■  第1報告は、吉田栄介氏(慶應義塾大学)および徐智銘氏(慶應義塾大学大学院商学研究科後期博士課程)より、「日本企業の品質コスト志向性:実態調査に基づく探索的分析」と題する研究報告がなされた。本報告は、高品質と低コストの両立を志向するといわれてきた日本企業の管理活動実態について、郵送質問票調査(有効回答会社数130社、回収率15.3%)の結果に基づいて考察を加えたものである。
 報告では、4つの仮説((1)日本企業は高品質と低コストを同時的に実現しているのか、(2)日本企業における高品質・低コストの実現と業績管理はどのような関係があるのか、(3)日本企業における高品質・低コストの実現と関係する管理・活動はどのような関係があるのか、(4)日本企業における高品質・低コストの優先性について、どのような全体的傾向があるのか)が提示された。(1)については、高品質と低コストを同時的に実現している傾向があること、(2)については、事業戦略と業績目標、特にプロセス指標との整合性が、高品質・低コストの実現のために重要であること、(3)については、高品質と低コストの実現に対して、多様なコストマネジメントが機能していることが明らかにされた。また、(4)については、品質・コスト志向性に基づいて企業群を4つに分類し、仮説的に発展モデルが提示された。

■■ 第2報告は、高野学氏(西南学院大学)より、「東日本大震災以降の電気事業における総括原価方式の役割」と題する研究報告がなされた。本報告は、電気事業で電気料金総収入を算定する際に、従来から採用されてきた「総括原価方式」が、東日本大震災による福島第一原発の事故により新たに発生した原発事故費用を考慮するようになってから、どのように役割変化がみられたのかについて考察を加えたものである。
 報告では、(1)原発被害者への損害賠償の財源となる一般負担金は、新たな営業費項目を追加することによって総原価の中に算入し、原子力事業者の利用者から徴収していることや、(2)福島第一原発の廃炉費用である減価償却費ならびに解体引当金は、その算定方法を変更することにより、廃炉後も総原価の中の営業費に算入することが認められ、電気料金で廃炉費用が回収されていることなどが明らかにされた。

■■ 第3報告は、浅川哲郎氏(九州産業大学)より、「オバマ改革以降の病院マネジメントシステムの変化について」と題する研究報告がなされた。本報告は、アメリカのオバマ政権によって2010年に立法化された医療保険制度改革法(ACA)により、病院規模や病院組織に変化が生じているのか、また、病院の経営形態にどのような変化がみられているのかについて、報告者の現地調査に基づいて明らかにしようとしたものである。
 報告では、ACA以前に皆保険を実施したマサチューセッツ州の病院として、マサチューセッツ総合病院のほか、ハーバード大学医学部、ジョスリン糖尿病研究所、ボストン子供病院などが紹介された。そして、(1)オバマ医療制度改革は、米国の医療システムを劇的に変える可能性があることや、(2)マサチューセッツ州では、ハーバード大学の関連病院のような最先端病院においても、時間主導型活動基準原価計算(TDABC)のような原価計算システムを導入し、業務改善を図っていることが示された。

■■  第4報告は、田坂公氏(久留米大学)より、「フルーガル・エンジニアリングと原価企画」と題する研究報告がなされた。本報告は、インドで考案されたフルーガル・エンジニアリング(FE)と原価企画の関連性を検討し、開発の現地化の新たな方向性を考察しようとしたものである。報告は、原価企画とFEの関係性を、(1)支援体制と(2)設計開発プロセスの面から明らかにしている。
 報告では、FEは新興国で生まれた手法であるが、先進国への逆輸入まで考えているリバース・イノベーションとは異なると捉え、FEを活用した原価企画は、(1)空洞化には関係していないこと、(2)開発を完全に現地化すれば、ノウハウの技術流出を抑えられること、(3)新製品を新興国市場で生産・販売し成功を収めるための効果的な手段になりうることが、その展望として明らかにされた。

 

■■ 研究報告会終了後、懇親会が西南クロスプラザ(ゲストルーム)にて開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり、盛況のうちに大会は終了した。

2014年度 第2回(第43回)九州部会 開催記

2014年7月29日|下関市立大学 足立俊輔

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■■ 日本管理会計学会2014年度第43回九州部会が、2014年7月26日(土)に九州大学(福岡市箱崎)にて開催された(準備委員長:大下丈平氏(九州大学教授))。今回の部会では、九州以外に関西・中部・関東からもご参加をいただくなど、20名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。


■■  第1報告は、角田幸太郎氏(別府大学講師)より、「英国プロサッカークラブにおける人的資源の会計と管理の事例研究」と題する研究報告がなされた。報告は、プロサッカークラブの人的資源の測定・評価の先行研究(Morrow(1992)、Risaliti and Verona(2013)など)が財務会計の分野が中心であることを指摘した上で、人的資源に関する管理会計/マネジメント・コントロールの側面からの分析を目的としたものである。報告は文献研究のほか、英国・日本のプロサッカークラブへのヒアリング調査に基づいたものである。2014kyushu2-1.JPG
 報告では、(1)英国プロサッカークラブでは、企業外部に向けて積極的に選手価値の会計と開示を行っており、選手の移籍金を巡る1995年のボスマン判決以降、その評価方法に変遷が見られること、(2)Oxford United FC Ltdや(株)大分フットボールクラブへのヒアリング調査から、選手の業績評価システムと給与査定システムの実態や相互関係の情報を得ることができたことが明らかにされた。

■■ 第2報告は、黒瀬浩希氏(九州大学大学院博士後期課程)より、「グループ子会社におけるCSRマネジメント・コントロールの事例研究」と題する研究報告がなされた。本報告は、グループ子会社(飲料製造・販売グループの物流子会社X社)におけるCSRマネジメント・コントロールについての事例研究である。具体的には、Epstein and Roy(2001)やDurden(2008)、細田・松岡・鈴木(2013)の先行研究をグループ子会社に適応した場合、フォーマル・コントロールシステム(FCS)やインフォーマル・コントロール・システム(ICS)にどのような影kyushu2-2.JPG響が生じるかを明らかにしたものである。
 報告では、(1) Epstein and Roy(2001)のSLiM(サステナビリティ・リンケージ・マップ)分析は、グループ子会社においてもサステナビリティ業績と財務業績の双方を向上させる有効な手段となりうること、(2)FCSにおいて指標化が困難な「コンプライアンス」や「リスク管理」といったCSR業績は、研修や人権学習などのICSを通じて補完されていることが明らかにされた。

■■ 第3報告は、木村眞実氏(沖縄国際大学准教授)より、「自動車静脈系サプライチェーンへの試案MFCA」と題する研究報告がなされた。本報告は、自動車の静脈産業(使用済自動車の解体・製錬を行う業者)に試案MFCA(マテリアルフローコスト会計)を適応することで、廃棄物の削減と資源の有効利用につなげる生産プロセスの検討を目的としたものである。具体的には、使用済自動車の付着物ワイヤーハーネスに解体加工を施すプロセスに試案MFCAを適応し、そのプロセスの「見える化」を図ろうとしたものである。kyushu2-3.JPG
 報告では、(1)使用済自動車(ELV)の組成データは自動車メーカーからは開示されていないため、静脈産業にインプットされる製品が資源として有効利用できるかどうかは実証試験を実施しないと判断は難しいこと、(2)しかしながら、静脈産業にとって、生産プロセスにおける物量情報と金額情報が提供できるMFCAは有用なツールとなり得ることが明らかにされた。


■■  第4報告は、西村明氏(九州大学名誉教授)より、「企業経営戦略とリスクマネジメント」と題する研究報告がなされた。報告は、企業が抱える様々なリスクの態様を、経営活動全体の中に位置づけて管理するために、管理会計がどのように貢献することができるかを明らかにしようとしたものである。
 報告では、リスク管理の手順と構造を、フィードバック統制とフィードフォワード統制の側面で分析することで、利益機会kyushu2-4.JPGの開発・実現から企業価値創造に向かうプロセスが明らかにされた。その上で、リスクを経営管理全体の中に位置づけるためには、戦略リスク・経営財務リスク・業務リスクそれぞれに対応したリスク対応が必要であり、そのためにはリスク尤度と期待損失額の関係でリスク態様を描き、そのリスクの経営対応を具体的に検討する。報告者は以上のプロセスを、企業が実際に抱えるリスク問題と関連させながら明らかにしている。 

■■ 研究報告会の後、総会が行われた。総会では、前年度の会計報告と今年度の九州部会開催の議題が出され、双方とも承認を得た。また、次回の九州部会は、11月22日に西南学院大学にて行われることが情宣された。

2014年度 第1回関西・中部部会&第42回九州部会 開催記

2014年4月21日|足立俊輔(下関市立大学)

■■ 日本管理会計学会2014年度第1回関西・中部部2014kansai1_4.JPG会及び第42回九州部会が、2014年4月19日(土)に下関市立大学(下関市大学町)にて開催された(準備委員長:島田美智子氏(下関市立大学教授))。今回の合同部会では、関西・中部・九州以外に関東からもご参加をいただくなど、20名近くの研究者や実務家の参加を得て、活発な質疑応答が展開された。また研究報告に先立ち、関西・中部部会役員会が開催された。

■■  第1報告は、水島多美也氏(中村学園大学)より、「アメーバ経営における時間当り採算での時間の意味」と題する研究報告がなされた。報告は、京セラアメーバ経営を対象に、1.どのような時間が扱われているのか、2.時間と管理会計・原価計算との関係、3.業績評価会計や意思決定会計といった管理会計体系論からの検討の3点を、文献レビューに基づき明らかにしようとしたものである。2014kansai1_1.JPG
 報告では、1.アメーバ経営の「総時間」には、「共通時間」や「振替時間」が加味されているため、「時間」は広範な概念となっていること、2.各アメーバだけの指標ではなく、全社的な視点から時間当り採算を考えなければならないため、「利益連鎖管理」や「速度連鎖効果」の概念が存在していること、3.期間計画の重要な要素として時間が使われていることから、時間を中心に業績評価会計や意思決定会計が展開されていることが指摘された。

■■ 第2報告は、岡本健一氏(タスクサポート株式会社)より、「小規模事業者への管理会計の仕組みの導入の実情」と題する研究報告がなされた。本報告は、小規模事業者に管理会計の仕組みを導入させるにあたり生じる問題点と、その具体的な解決策やポイントが提示された。  大企業で導入される高度な管理会計システムは、小規模事業者にとってコストと手間がかかり導入は難しいものの、部門別独立採算制でサブリーダーを育成することや、事業の採算性をあげて会社2014kansai1_2.JPGを生存させることは必要不可欠であるため、管理会計システム導入は必要である。
 報告では、こうした時間・スタッフ・資金の面で苦労する小規模事業者でも管理会計の導入に意欲をもたせるためには、「1人時間当り粗利」を用いるなど、分かりやすく感覚がつかみやすい指標を実際に提示することの重要性が指摘され、また、そうした資料を作成するための会計ソフトが紹介された。

■■ 第3報告は、島田美智子氏(下関市立大学)より、「財務報告の"Managerialisation"と会計変化の今日的意味ーZambon [2011]の解釈を通じてー」と題する研究報告がなされた。本報告は、Zambon [2011]の所説を手がかりとしながら、財務報告と管理会計の関連性に関する検討を新しいディメンジョンで展開することを目的として、「財務報告と管理会計の相互作用的進化」の現状について論点整理を行い、当該現状の今後の展開方向を洞察しようとしたものである。
 報告では、財務報告の"Managerialisation"の諸側面とその進展過程、財務報告の"Managerialisation"の外的作用因についてのZambon [2011]2014kansai1_3.JPGの解釈が説明された上で、Zambon [2011]の問題提起が有する含意として、1.財務報告の"Managerialisation"が不可避的な現象であるとするならば、当該現象の進展を前提としたうえで、財務報告のレレバンス・リゲインに向けた制度設計を構想する必要があることや、2.財務報告と管理会計が密接に絡み合う近年の会計変化は、財務報告の中心的問題点を改めて炙り出し、財務報告の概念と役割の再定義が求められていることなどが、報告者の総括的な解釈として提示された。

■■ 研究報告会の後、大学生協にて懇親会が開催され、実りある交流の場となった。

2013年度 第3回フォーラム&第41回九州部会 開催記

2013年12月 3日|加藤典生(大分大学)

2013forum_1.jpg■■ 日本管理会計学会2013年度第3回フォーラムが,第41回九州部会と兼ねて2013年11月16日土曜日に大分大学旦野原キャンパスにおいて開催された。今回のフォーラムでは,『大分・別府,九州から地域経済・地域産業の将来を考える』というテーマで,大分・別府,九州の地域産業に焦点を当てた企業講演と研究報告が行われた。大会準備委員長である大崎美泉氏(大分大学)の開会の挨拶があり,第1部では加藤典生(大分大学)の司会のもと,高橋幹氏(南九州税理士会大分県連合会副会長),桑野和泉氏(由布院玉の湯代表取締役社長)の2組が講演され,第2部では大下丈平氏(九州大学)の司会のもと,魚井和樹氏(ダイハツ九州株式会社取締役相談役),宮地晃輔氏(長崎県立大学)の2組から企業講演,研究報告が行われた。いずれの講演および報告もフロアから活発な質問や意見があり,有意義な議論がなされた。その後,場所を移して懇親会が行われ,散会となった。

■■ 第1報告:高橋 幹氏(南九州税理士会大分県連合会副会長)

「顧問先の経営成績から大分の景気動向をさぐる」

2013forum_3.jpg 高橋氏は,顧問先の法人データをもとに業種別に区分して経営分析を行い,その結果から大分県の企業の現状と課題を提示された。同分析結果から,法人税額が前年度比で見た場合,およそ半分が増えている一方で,残りの半分が減少傾向にあることが明らかとなり,これを受けて,大分では,良い会社とそうでない会社が明確になってきており,2極化してきていることが指摘された。また,同分析結果から,大分の土地という点でも,オリンピックの東京開催決定やアベノミクス効果の影響が入ってきていると判断され,具体的には建設業,不動産業,とりわけリフォームがそうした影響を受けていると述べられた。今後の課題として,消費税率の引き上げの問題,納税資産の問題,相続税の問題が今後の大分の中小企業にとってかなり厳しい対応が必要になってくると主張された。

■■ 第2報告:桑野和泉氏(由布院玉の湯代表取締役社長)

「由布院の観光・まちづくり」

2013forum_4.jpg 桑野氏は,まず大分県が大分駅を中心にしたまちづくりが行われていることを伝えた後に,日本の「観光」が世界的に見て遅れていることを指摘し,日本製品の販売を含めて海外の方々が日本に来てもらうことが大事であり,オリンピックが日本で開催されることが決まった今日にあって,今こそ日本の持っている力を最大限発揮するべきであると主張された。人口減少社会が我々の想定以上の速さで進む中,定住人口が望めなければ交流人口を向上させていく必要があるとされ,各業種の経済効果を期待できる観光の重要性が指摘され,由布院の観光の取組が紹介された。由布院では,調和をモットーに,宿泊施設の価格帯に幅を持たせることで,競争ではなく共存関係を築けていること,女性のリピーターの方が多いこと,温泉街を作らず小規模な温泉地を意識していること,馬車が通ることでゆっくりな町であることをアピールしていること,世代交代を早めることで自らの判断に責任を持ってもらうにようにしていることなどの取組が示された。また,数字から見えない観光は議論できないとし,会計数値の重要性も指摘された。

■■第3報告:魚井和樹氏(ダイハツ九州株式会社取締役相談役)

「ダイハツ九州のめざすところ」

2013forum_6.jpg 魚井氏は,グローバル化に着目しながら,ダイハツ九州の今後の方向性について報告された。同社では,世界一のスモールカーを目指すために,軽自動車に相応しい自動化,設備のシンプル化に力を入れ,工場設置に対する工期短縮に取り組まれていることが説明された。海外との競争において,販売価格を上げることが困難な状況では原価低減活動が重要であり,そのために現地(大分・九州地域)調達率の向上を目指すとともに,原単位を下げていくこと,スピード力,一人で何でもできる能力,診える化が必要であることが主張された。時間とお金がかかっていてはグローバル化の時代に海外で勝負にならないことが繰り返し指摘された。

■■第4報告:宮地晃輔氏(長崎県立大学)

「A社造船所における新造船事業の採算性改善のための方策(2)」

2013forum_7.jpg 宮地氏は,リーマンショック以降,船会社の需要低下を原因とした「極端な買い手市場」による造船市場の競争激化の状況のもとで,造船準大手のA社造船所で取組が本格化した原価企画の現状と問題点を報告し,それを踏まえて採算性改善の方策について提示された。ここでは,A社が原価企画からの効果を当初期待した通りには得られていないこと,また,これまでの地元の協力先企業との関係で新たなサプライヤー(特に海外)を参入させることが困難であるといった,保守的なサプライヤーの存在が採算性の改善を阻害していることが,新造船事業の採算性改善のための課題であったことを指摘し,同社や協力先企業も新規参入への抵抗が強いことから,保守的なサプライチェーンを前提とした採算性改善の方策として,これまで不足していた両者の協力関係を強化していくことが提示された。

2013年度 第2回九州部会開催記

2013年7月24日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■日本管理会計学会2013年度第2回(第40回)九州部会が,2013年7月20日(土)に福岡大学(福岡市城南区七隈)にて開催された(準備委員長:福岡大学准教授・飛田努氏)。今回の九州部会では,関東・関西・北陸からもご参加をいただくなど,15名近くの研究者や実務家の参加を得て,活発な質疑応答が展開された。

2013kyusyu2_1.jpg■■第1報告は,足立洋氏(九州産業大学准教授)より,「管理会計と目標利益達成の柔軟性」と題する研究報告がなされた。報告は,管理可能性原則の遵守を志向した予算管理システムにおける柔軟性確保の可能性と,どのようなプロセスを経てそれが発揮されるのかを,ケーススタディを中心に明らかにしたものであった。ケーススタディは,各種繊維製品の繊維加工などを取り扱うセーレン株式会社に対する半構造化インタビューに基づいたものであり,(1)管理可能な業績範囲の拡大として,月次で決まっている業績をより広範な年次という範囲で決定する「管理可能性の時間拡大」がみられていること,(2)水平的コミュニケーションだけでなく,現場と管理者の「垂直的コミュニケーション」によっても予算管理システムの柔軟性が確保されることが証明された。

2013kyusyu2_2.jpg■■第2報告は,丸田起大氏(九州大学准教授)より,「アメーバ経営の導入効果の検証―コミュニケーション活性化を中心に」と題する研究報告がなされた。報告は,アメーバ経営の導入効果として,採算意識・使命感・情報共有などの向上によりコミュニケーションの活性化が達成されるかを,製造業K社の工場に対する質問票調査に基づき分析したものであった。質問票調査は,リーダーとメンバーに区別をしたアメーバ経営導入の半年後と1年半後の二時点で行ったものである(サンプル数:半年後116、1年半後115)。報告では,(1)アメーバ経営の導入効果は,リーダーだけでなくメンバーにも現れていたこと,(2)アメーバ経営の導入効果の程度は,リーダーの方がメンバーよりも効果が高かったこと,(3)情報共有はコミュニケーションと直接的に正の関連をもっていた一方で,採算意識と使命感は間接的に正の関連をもっていたことが示された。

2013kyusyu2_3.jpg■■第3報告は,矢澤信雄氏(別府大学教授)より,「CSR報告書の評価基準とその課題」と題する研究報告がなされた。報告は,日本における環境報告書からCSR報告書へのシフトが社会にどのような影響を与えるかを問題意識に,CSRの歴史とCSR報告書の評価基準を明らかにしようとしたものであった。報告では,(1)我が国では最初,環境報告書を公表していた企業が報告書のタイトルを「CSR報告書」へと変更し,CSR報告書の一部が実質「環境報告書」になっているケースが多いこと,(2)そのため,報告書の評価基準に占める環境のウェートが減少することにより,企業の環境に対する取り組みの努力が分散してしまう危険性があることが指摘された。また,企業の社会貢献活動の成果を報告するに当たって,成果をなるべく定量的に明示することが望ましいが,その点を意識したCSR報告書の評価基準は現状では少数派であることが指摘された。

2013kyusyu2_4.jpg■■第4報告は,招聘講演として宮本寛爾氏(大阪学院大学教授)より,「グローバル企業の経営管理と管理会計」と題する研究報告がなされた。報告は,C.A.Bartlet, et al.(1989)のトランスナショナル戦略を採用する企業における管理会計の利用可能性に中心に,グローバル企業の管理会計システムを捉えようとしたものであった。報告では,グローバル企業の組織構造の歴史や経営管理が紹介された上で,トランスナショナル戦略を採用する企業が,経営資源を分散し,事業を専門化し,相互依存関係を構築することが必要となり,世界中の専門化した組織単位を結びつける統合ネットワークを構築することが説明された。その上で,(1)為替リスクに晒されている通貨の金額を明らかにする多通貨会計情報の利用のほか,(2)本国への送金の最大化を志向する場合は「本国通貨」を採用するのが望ましいものの,グローバルな立場からの存続・成長を志向する場合には「合成通貨」を採用することが望ましいことが指摘された。

■■報告後,臨時総会が開かれ,部会開催補助と他の部会との合同開催に関する議決がなされ,第3回九州部会は11月16日に大分大学にて日本管理会計学会第3回フォーラムと合同開催することが情宣された。また,懇親会が中央図書館「フォレスト」にて開催された。懇親会は有意義な研究交流の場となり,盛況のうちに大会は終了した。

2013年度 第1回九州部会開催記

2013年4月25日|足立俊輔 (下関市立大学)

■■日本管理会計学会2013年度第1回(第39回)九州部会が,2013年4月20日(土)に九州産業大学(福岡市)にて開催された(準備委員長:浅川哲郎氏)。今回の九州部会では,関東・関西・北陸など他部会からも複数のご参加をいただき,20名近くの研究者の参加があり活発な研究報告と質疑応答が行われた。

2013kyusyu1_1.JPG■■第1報告では,足立俊輔氏(下関市立大学講師)より,「米国病院原価計算の発展と価値重視の病院経営」と題する報告があり,米国の病院経営および病院原価計算に関する文献調査に基づき,米国病院原価計算の発展を計算原理の精緻化の側面と計算合理性の側面から整理することで,医療の質とコストのバランスを考慮する価値重視の病院経営を支援する時間主導型の病院原価計算の有用性が明らかにされた。報告では,価値重視の病院経営においては時間主導型の病院原価計算を用いて医療提供者と病院経営者に共通の情報基盤を構築する必要性があること,また,医療システムの将来像として「価値重視の償還システム(value-based reimbursement)」を展望する必要があることが指摘された。

2013kyusyu1_2.JPG■■第2報告では,飛田努氏(福岡大学准教授)より,「中小企業のマネジメントコントロールシステム関する研究: 熊本・福岡の事例を中心として」と題する報告があり,中小企業におけるマネジメントコントロールシステム(以下MCS)の利用状況に関するアンケート調査と,佐賀県の金型メーカーS株式会社の事例研究が報告された。アンケート調査は,Simons(1995,2000)のMCSに基づいた共分散構造分析が行われ,大人数企業(30名以上)では会計情報利用に関して有意な関係が見られるものの少人数企業では有意な関係が確認できなかったこと,経営理念の浸透は少人数企業では係数が高いことが示された。またS社の事例では,業績評価システムの特徴のほか,社長が高齢化・引退する中小企業において事業継承をどう乗り越えるかが課題となっていることが指摘された。

2013kyusyu1_3.JPG■■第3報告では,吉田康久氏(九州産業大学教授)より,「英国の行政・公会計改革の取り組み ‐留学で感じ得たこと‐」と題する報告があり,イギリスにおける行政・公会計制度改革の取り組みが紹介された。報告では,サッチャー政権からの行政改革の一端として,競争入札制度やPFIからPPPの流れや,包括的業績評価制度から包括的地域評価制度の変遷など,英国の行政改革の経歴に沿って議論が進められた。また,公会計制度改革の取組主体として英国勅許公共財務会計協会(CIPFA)が果たす役割や,資源会計予算の特徴,それに勅許公共財務会計士の認定制度についても言及され,英国においても発生主義会計の導入にあたって解決すべき課題があるため結論には達していないことが説明された。

2012年度 第3回九州部会開催記

2012年12月10日|丸田 起大 (九州大学)

■■日本管理会計学会2012年度第3回(第38回)九州部会が,2012年11月24日(土)に中村学園大学(福岡市)にて開催された(準備委員長:水島多美也氏)。今回の九州部会では,他部会からも複数のご参加をいただき,20名近い研究者と実務家の方々とともに活発な研究報告と質疑応答がなされた。

2012kyusyu3_1.JPG■■第1報告では,西村明氏(別府大学教授)より,「管理会計の現代的課題―回顧と展望―」と題する報告があり,最近の管理会計の展開と方向を,ABCやBSCに象徴される戦略管理会計と,IFACのEnterprise Governanceに象徴される機会・リスクへの関心と整理したうえで,管理会計は第1のギャップであるレレバンス・ロストから,不確実性の拡大による第2のギャップを経て,金融麻痺による組織の自己衰退という第3のギャップの段階に入っており,利益機会の創造とリスクへの対処のために,管理会計は不確実性を完全には管理しえないという謙虚な姿勢を保ち,柔軟で機動的な組織構造のもとで,フィードバックとフィードフォワードを有機的に統合し,自らも絶えざる革新に挑戦しなければならないと主張された。

2012kyusyu3_2.JPG■■第2報告では,水島多美也氏(中村学園大学准教授)より,「時間と管理会計技法に関する一考察」と題する報告があり,管理会計の先行研究においてどのような時間が扱われてきたのかという問題設定のもとで,大きく分けて,先端製造技術における時間,生産管理システムにおける時間,および戦略における時間が検討されてきたことを示し,その枠組みのもとで,非財務的指標,スループット会計,アメーバ経営,Jコスト論などの多様な研究が展開されているが,とくにABC/ABMの議論においてコストドライバーとしての時間の研究が多く蓄積されてきていることについていくつかの論者の研究を紹介され,管理会計論における時間研究の体系化の意義を主張された。

2012kyusyu3_3.JPG■■第3報告では,高梠真一氏(久留米大学教授)より,「デュポン社のベンチャー事業における割当予算の申請と承認」と題する報告があり,デュポン社では1910年代には,追加投資を要求する各部門が経費節約の見積額を申請し,それを経営執行委員会が投資利益率で審査する割当予算システムが実践されており,部門レベルではまだ投資利益率にもとづく意思決定が行われていなかったが,1960年代になると,割当予算を要求する際には各部門で自ら投資利益率の見積値を計算し,経営執行委員会では投資利益率で識別できない代替案の選択における補完的な評価方法として割引キャッシュフロー法が用いられるようになっており,管理会計技法の発展と浸透の興味深い歴史的事例が紹介された。

2012kyusyu3_4.JPG■■第4報告では,足立洋氏(九州産業大学講師)より,「責任会計システムと柔軟性」と題する報告があり,不確実性の高い状況下における責任会計システムの限界が主張されているが,管理会計実務ではこの問題にどのように対処しているのかについて,セーレン株式会社においてインテンシブな定性的調査を実施し,製造部門をプロフィットセンター化し,日々の会議や改善提案制度によるエンパワメントを通じて,生産計画の頻繁な変更の権限を現場に付与することによって,会計情報を過去釈明のための回答装置ではなく未来創造のための学習装置として活用し,目標管理制度のもとでの利益責任達成に必要な柔軟性を引き出すことに成功している事例を紹介された。

■■報告会終了後には,開催校のご厚意により懇親会が開催され,有意義な交流の場となった。次回の九州部会は来年4月に九州産業大学で開催の予定である。

2012年度 第2回九州部会開催記

2012年8月 1日|丸田 起大 (九州大学)

■■日本管理会計学会2012年度第2回(第37回)九州部会が,2012年7月28日(土)に西南学院大学(福岡市)にて開催された(準備委員長:高野学氏)。今回の九州部会では,関西中部部会からも複数のご参加をいただき,30名近い研究者と実務家の方々とともに活発な研究報告と質疑応答がなされた。

2012kyusyu2_1.JPG■■第1報告では,島田美智子氏(下関市立大学教授)より,「財務報告の管理会計化―Zambon[2011]の所説に寄せて―」と題する報告があり,Zambon,S.[2011] The managerialisation of Financial Reporting : an introduction to a destabilising accounting change, Financial Reporting, Supplement.を手掛かりに,現代の財務報告においては,IT技術の発展や自発的ディスクロージャーの進展を背景に,経営者の視点にもとづく管理会計情報の利用が重要性を増し,企業特殊的情報の開示,業績指標の多様化,財務会計領域の拡張,理論と実務の緊密化などが進んでおり,財務会計と管理会計の相互作用的進化を前提とした制度設計や会計教育の必要性が主張された。

2012kyusyu2_2.JPG■■第2報告では,大下丈平氏(九州大学教授)より,「コントロールのパラドックスと管理会計―『レレバンス・ロスト』の意義を考える―」と題する報告があり,『レレバンス・ロスト』刊行から四半世紀を迎えた現在,依然として管理会計は,会計領域内部からの批判,生産現場からの批判,および資本市場からの批判,という3つの「レレバンス・ロスト」に直面しているとの問題提起がなされ,この3つの矛盾した批判に応えていく方向性として,TDABC,VBM,COSO-ERMなどの意義,ならびにコントロールがガバナンスやCSRを取り込みつつ,それらを規律付けていく必要があるとの主張がなされた。

2012kyusyu2_3.JPG■■第3報告では,新茂則氏(中村学園大学教授)より,「不動産企業の時価情報開示と株価―賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準の適用による株価の影響―」と題する報告があり,近年の会計制度改革による時価情報開示が株価に反映されているのかという問題意識のもと,賃貸等不動産会社をサンプルとして,不動産会社の保有賃貸等不動産の含み益の実態,日経平均株価やTOPIXと特定銘柄株価の相関,決算発表前後の出来高や株価の変動パターン,賃貸空室率と株価の関係,PER・PBR・ROA・ROEの推移などを検証し,株式市場は効率的であるとの見解を示された。

 報告会終了後には臨時の部会総会が開催され,部会活動のさらなる活性化のために,講師招聘謝金の増額,開催校補助の増額,院生参加者の参加費等の負担軽減について提案がなされ,全会一致で承認された。また総会終了後には開催校のご厚意により懇親会が開催され,有意義な交流の場となった。次回の九州部会は11月に中村学園大学で開催の予定である。

2012年度 第1回九州部会 開催記

2012年4月22日|丸田 起大 (九州大学)

■■日本管理会計学会2012年度第1回(第36回)九州部会が,2012年4月21日(土)に九州大学経済学部(福岡市東区箱崎)にて開催された(準備委員長:九州大学教授・大下丈平氏)。今回の九州部会は,関西中部部会からも多数のご参加をいただき,雨天にもかかわらず16名の研究者と実務家の参加があった。

2012kyusyu1_1.JPG■■第1報告では,高梠真一氏(久留米大学教授)より,「デュポン社のベンチャー事業分析におけるキャッシュ・フローの役割」と題する報告があり,1970年代のデュポン社におけるベンチャー事業投資の評価・管理に対するキャッシュ・フロー情報の活用に関する詳細な一次資料が紹介され,デュポン社において1960年代までは投資利益率による投資評価が中心であったが,1970年代以降はキャッシュフローモデルのフレームワークを確立し,割引キャッシュ・フローにもとづいた投資評価も実践されていた事実を指摘された。

2012kyusyu1_2.JPG■■第2報告では,蒋益鳴氏(熊本学園大学院生)より,「中国病院管理会計―「績効工資」(変動給)制度の限界―」と題する報告があり,中国史における「会計」の起源や歴代の帝王が会計を活用して統治してきた歴史などが紹介された後,WTO加盟後の現代中国における病院経営では成果主義報酬制度としての「績効工資」が重要な役割を果たしており,病院の医師や看護師の動機付けや人材確保に機能している反面,近視眼的行動の助長による長期的業績の犠牲,人材の流出や組織内での権力格差,ストライキなどの反発も生じている実態が紹介された。

2012kyusyu1_3.JPG■■第3報告では,浅川哲郎氏(九州産業大学教授)より,「福岡県における病院組織の変遷」と題する報告があり,米国の病院経営の背景にある医療・保険制度の変遷や,米国の先行研究にもとづいて,機能別組織,事業部制組織,マトリックス組織,パラレル組織,プログラム組織という病院組織の基本モデルが紹介された後,福岡県の麻生飯塚病院と聖マリア病院の組織構造の変遷に関する聞き取り調査の結果にもとづいて,地域における病院間の競争状況と病院の組織構造の戦略的な変更との関係などが考察された。

2012kyusyu1_4.JPG■■第4報告では,出水秀冶氏(?出水・コンピュータ・コンサルティング)より,「商品市場適合率の考察」と題する報告があり,現在の好業績企業のケースとしてロック・フィールド社を取り上げ,管理会計情報にもとづく需給ギャップの解消が好業績の鍵であるとの主張にもとづいて,市場の詳細で柔軟なセグメント化および顧客イメージの具体的なプロファイリングの必要性と,ターゲット市場における商品売上の成功度を測る「商品市場適合率」という指標が提唱された。

 各報告に対して活発な質疑応答がなされ,報告会終了後には定例の部会総会も開催された。次回の九州部会は7月に西南学院大学で開催の予定である。

2011年度 第3回九州部会兼第2回リサーチセミナー開催記

2011年12月15日|丸田起大(九州大学)

■■日本管理会計学会第35回九州部会兼2011年度第2回リサーチセミナーが,2011年11月12日(土)に福岡大学にて開催された。今回も関東・関西から報告者・参加者を迎えるなど,30名近い参加者によって活発な質疑応答が行われた。

■■第1報告では, 福島一矩氏(西南学院大学准教授)より,「マネジメント・コントロールと製品イノベーションの関係―質問票調査に基づく探索的研究―」と題する報告があった。福島氏は,どのようなマネジメント・コントロールが急進的イノベーションや漸進的イノベーションを促進もしくは抑制するのか,また組織成長に応じて重視される製品イノベーションが異なるのか,という研究課題について,マネジメント・コントロールの枠組みとして診断型コントロール/対話型コントロール/理念システム/境界システムを採用したうえで,新興市場を含む上場企業を対象とした質問票調査を実施し,急進的イノベーションの創発には理念システムが,漸進的イノベーションの創発には理念システムと対話型コントロールが,それぞれ有用であり,また製品イノベーションのタイプを問わず,新興企業のほうが製品イノベーションの創発につながっている,ことを実証的に主張された。

■■第2報告では, 加藤典生氏(大分大学准教授)より,「原価企画がうまく機能するための条件:逆機能の解消に向けて」と題する報告があった。加藤氏は,行き過ぎたコストダウン要請によるサプライヤーの疲弊,燃え尽き症候群や手法依存症候群などの設計エンジニアの疲弊,目標原価の達成可能性が異なる部門間での組織内コンフリクト,地球環境問題への対応の鈍化といった,原価企画の逆機能が相互に関連しながら,品質問題や行き過ぎた顧客志向を引き起こしているという現状認識を示し,心理学による創造性阻害要因の排除,マーケティング研究による価格決定能力の再獲得,そして管理会計研究による原価企画対象費目の拡張,業績評価指標の開発,サプライヤーレベルでの原価企画の導入促進,などの学際的な研究の必要性を提起された。

2011kyusyu3_1.jpg■■第3報告では, 関口善昭氏(SAPジャパン株式会社)より,「IFRS導入が管理会計に与える影響について」と題する報告があった。関口氏は,IFRSが財務報告に与える影響として,収益認識基準,総額表示から純額表示へ,減価償却費への影響,有形固定資産の減損,開発費の資産化,廃止事業の別建て表示,機能通貨の導入などを取り上げ,これらの導入が管理会計に与える影響として,包括利益をボトムラインとする予算編成の難しさ,営業利益が特別損益項目を含むことになること,一部の基準が不明確な段階ではIFRS基準と日本基準が混在したままで予実管理せざるをえないこと,将来収益の見通しが今期の業績や資産額に大きく影響するため,組織階層ごとに非財務的な先行指標となるKPIをリアルタイム・日次・週次・月次・年次でモニタリングする必要があること,事業セグメント間で統一的な棚卸資産評価法を採用しなければならないこと,などを指摘された。

2011kyusyu3_2.jpg■■第4報告では,西村明氏(別府大学教授)より,「これからの管理会計を考える―現代という時代と管理会計―」と題する報告があった。西村氏は,エンロンやワールドコムの破綻を象徴とする経営者の金融化,リーマン・ブラザーズやGMの破綻を象徴とする米国金融機構の危機,そしてギリシャの財政危機を象徴とする国際的な金融機構の危機によってもたらされている,現代の世界的な経済危機のもとでの経営・会計は,理論と実務の乖離としての第1次レレバンス・ロストの段階から,不確実性と統制不能性の乖離によって能率・効率・企業構造のバランスが不安定化している第2次レレバンス・ロストの段階を迎えているとの現状認識を示し,会計における「哲学」の構築,環境と企業構造の科学的な融合,人間組織の社会的な主体能動性の活用,グローバル情報システムによる宇宙規模の情報解析によって実現される,利益と機会(リスク)のフィードバック/フィードフォワード・コントロールを基軸とするこれからの管理会計の構想を示された。

■■報告会後は,主催校のご厚意により,福岡市を一望できる学内のスカイラウンジ特別室にて懇親会が開催され,大いに盛会となった。

2011年度 第2回九州部会開催記

2011年8月 1日|丸田起大 ( 九州大学 )

■■日本管理会計学会2011年度第2回九州部会が,2011年7月23日(土)に鹿児島大学法文学部にて開催された(準備委員長:鹿児島大学准教授・北村浩一氏)。今回の九州部会は九州新幹線鹿児島ルートの全線開通を記念して,初めて鹿児島での開催が実現することとなった。今回も関東・関西から報告者・参加者を迎えるなど,20名を超える参加者によって活発な質疑応答となった。

2011kyusyu2_1.jpg■■第1報告では,田尻敬昌氏(九州大学博士課程)より「組織スラック形成と利益マネジメントに関する一考察」と題する報告があり,負債選択企業による会計保守主義の採用はビッグバスによる利益マネジメントではなく,救済機能を担う銀行のモニタリング下におけるリストラクチャリング行動の一環であるとの解釈を提示し,会計保守主義として棚卸資産の低価法や固定資産の減損などの条件付き保守主義と研究開発費の即時費用化や加速償却などの無条件保守主義を取り上げ,日経NEEDSによる製造業のサンプルで検証した結果,負債選択企業では条件付き保守主義および無条件保守主義のいずれを採用している場合でも銀行によって成長機会が保証されていることを確認し,財務危機時においても企業は組織スラックを形成できることが主張された。

2011kyusyu2_2.jpg■■第2報告では,木村眞実氏(徳山大学准教授)より「自動車解体業への試案MFCA」と題する報告があり,静脈産業におけるマテリアルフローコスト会計(MFCA)の適用の意義と可能性を検討するために,静脈産業における正の製品と負の製品の定義を示し,静脈産業は動脈産業からの負の製品を正の製品へと転換する生産プロセスを担っているとの理解のもと,静脈産業においてMFCAを導入することによって産業全体におけるリサイクル率が向上することを主張し,実在のある自動車解体業者における数値にもとづいて,静脈産業の生産プロセスへのインプットである負の製品100%からアウトプットとして残る廃棄物などの負の製品はわずか5.6%に過ぎなくなるとの検証結果が提示された。

■■第3報告では,和田伸介氏(大阪商業大学准教授)より「日本とドイツにおける原価計算実践の比較研究 ‐アンケート調査の結果から‐」と題する報告があり,日本とドイツの原価計算実践の現状やその相違に対する文化の影響を検証するために,ドイツの研究者との共同で両国における食品・機械・病院といった業種に属する組織に対して郵送調査やオンライン・アンケートを実施し,原価計算の目的はドイツでは管理会計目的が主であるのに対して日本では財務会計目的にやや重きが置かれていること,原価計算担当者はドイツでは主に大学教育で原価計算知識を習得しているが日本では入社後の実践を通じて習得していること,原価計算担当者の職業的地位や原価計算システムに対する満足度などは日本よりもドイツのほうがかなり高いことなどが紹介された。

■■第4報告では,田坂公氏(久留米大学教授)より「サービス業における原価企画の論点―定義と体系化―」と題する報告があり,サービス業に対する原価企画の適用可能性に関して,先行研究では医療,ホテル,鉄道,およびソフトウエアなどへの適用が検討されてきたことを整理したうえで,これら以外でもサービス業に属する多様な業種における事例の蓄積が求められること,そのなかで製造業における原価企画の重要ツールであるVEに相当するようなサービス業における重要な共通ツールの概念化が進められる必要があること,サービス業の特性のもとではインテグラル型・モジュール型といった部品すり合わせアプローチなど製造業での考え方が適用困難であること,などサービス業における原価企画の定義化に向けた課題を整理された。

■■報告会後は,主催校のご尽力により,桜島と錦江湾を臨む海沿いのホテルで懇親会が開催され,鹿児島の海と山の幸や芋焼酎を堪能するなど大いに盛会となった。

2011年度 第1回九州部会開催記

2011年4月16日|丸田起大 ( 九州大学 )

2011kyusyu1_1.jpg■■日本管理会計学会2011年度第1回九州部会が,2011年4月16日(土)に中村学園大学流通科学部にて開催された(準備委員長:中村学園大学准教授・水島多美也氏)。

■■第1報告では,篠原巨司馬氏(福岡大学専任講師)より「地域金融機関の業績評価制度―現場での実践と戦略実行―」と題する報告があり,地域金融機関での3週間にわたるフルタイムの参与観察結果を素材として,社会学における実践理論の枠組みにもとづいて,現場の従業員が実践にもとづく独自の理解のもとで業績評価指標を受け入れ,現場で戦略的な行動が実行に移されていくプロセスを論じられた。

■■第2報告では,島田美智子氏(下関市立大学教授)より「財務会計と管理会計の関係性再考―相互浸透とレレバンス・ロスト―」と題する報告があり,財務会計が内部情報を外部情報化する一方で,管理会計は外部情報を内部情報化しているなど,両者の相互浸透が過度に進行している現状を憂い,財務会計優位のもとで再び管理会計の発展が阻害されるのではないかとの問題提起がなされた。

■■第3報告では,矢澤信雄氏(別府大学教授)より「ライフサイクル・コスティングを適用した政策形成―発電技術への適用を事例として―」と題する報告があり,日米英独における各種発電技術のライフサイクル・コストの推算値にもとづいて,ライフサイクル・コストにもとづく各種発電技術に対する政策提言を試み,政策形成ツールとしてのライフサイクル・コスティングの意義が主張された。

■■第4報告では,今井範行氏(トヨタファイナンシャルサービス?,名城大学教授)より「暗黙知の練磨に管理会計はどう貢献できるか ‐TPSの視点を踏まえて‐」と題する報告があり,トヨタにおける暗黙知の歴史的な重要性や,トヨタの金融サービス子会社におけるトヨタ生産方式(TPS)の適用実験が紹介され,管理会計には現場が暗黙知を創造・練磨していく上で逆機能とならずにそれを支援することが求められているとの提言がなされた。

■■研究報告会に引き続き,定例の部会会員総会が開催された後,主催校のご尽力により懇親会が開催され大いに盛会となった。

2010年度 第3回九州部会開催記

2010年12月29日|足立俊輔(九州大学大学院経済学府博士課程)・田尻敬昌(九州大学大学院経済学府博士課程)

2010kyusyu3_1.jpg■■日本管理会計学会2010年度第3回(第32回)九州部会が,2010年11月20日(土)に九州産業大学(福岡市東区松香台)にて開催された(準備委員長:九州産業大学・浅川哲朗氏)。今回の九州部会では,関東からもご参加をいただくなど,17名の研究者や実務家の参加を得て,活発な質疑応答が展開された。

■■第1報告では,福島一矩氏(西南学院大学)より「組織の成長とマネジメント・コントロールの関係性 ‐郵送質問票調査に基づく実証研究‐」と題する研究報告がなされた。Simons[1995]のマネジメント・コントロール(以下MC)のフレームワークに依拠し,組織成長がMCに及ぼす影響とMCが組織業績に及ぼす影響を,上場企業1,435社(有効回答数124社)に対する質問票調査で実証分析している。その結果,次の2点が明らかになった。第1に,組織規模の拡大が,挑戦的な文化の形成を介してインタラクティブ・コントロールの利用を促進させること,直接的に,また分権化の推進を介して,診断型コントロールの利用を促進させることがわかった。第2に,インタラクティブ・コントロールは財務業績の達成度評価を高めるのに対し,診断型コントロールは非財務業績のほうを高めることが確認され,インタラクティブ・コントロールの利用が診断型コントロールの利用を促進させ間接的に非財務業績を高めることも確認された。

■■第2報告では,加藤典生氏(大分大学)・望月信幸氏(熊本県立大学)より,「原価企画に求められる役割期待の多様化―意思決定支援機能が及ぼす業績評価とサプライヤーの疲弊問題への影響―」と題する研究報告がなされた。4社への訪問調査により,現代企業が求める原価企画の機能とその要因を明らかにし,その新たな役割期待から生じる課題を検討している。厳しい経営環境の中で経営資源の選択と集中が求められ,その意思決定に原価企画が必要とされていることが明らかにされた。今後の検討課題として,次の2点が指摘された。1点目は,様々な経済主体が想定される原価企画において中止という意思決定に資する業績評価指標の設定である。2点目は,意思決定支援機能の高まりにより,協働から取引先の選択へと方向が転換される中で,安易な中止がサプライヤーとの関係の悪化のみならず,技術力の向上や既存製品の補修など多方面に負の影響を及ぼすことを考慮する必要性である。

2010kyusyu3_2.jpg■■第3報告は,田坂公氏(久留米大学)より,「原価企画研究の新展開と課題 ‐サービス業への適用可能性‐」と題する研究報告がなされた。報告では,サービス業の原価企画に関する先行研究のレビューを踏まえ,Kotler and Keller[2006]が示しているサービスの特性の一つである「不可分性」(生産と消費が同時に行われること)に着目して,企画・設計段階と量産段階を明確に区別することができないサービス業では,製造業と異なり原価改善と原価企画の区別がつけにくいことが指摘された。そのため,サービス改善のケースでも,ビジネスモデルの差別化が図れている場合,「サービスの原価企画」が適用できる可能性があると主張された。また,サービス業を報告者の原価企画研究アプローチに関連づけた場合,原価低減活動アプローチに位置づけられることも指摘された。

■■第4報告は,出水秀治氏((株)出水・コンピュータ・コンサルティング,ITコーディネーター)より,「中小企業の経営戦略におけるパフォーマンス測定」と題する研究報告がなされた。報告では,日本が欧米に比べ生産性に劣る原因の一つに,戦略の実行格差が中小企業で顕著にみられることが指摘された上で,ITシステムが戦略を管理できることが述べられ,IT利用により戦略成功を導く具体的な方法が示された。報告者の提案する具体的な戦略管理システムは,コマンドステーション,スタッフロボット,集計モニターの3つのサブシステムから構成される「経営戦略補佐官」と呼ばれるITシステムである。また,なぜ日本の経営のIT化が中小企業で遅れているのかを,パッケージやベンダーなど多角的な視点から説明され,将来的に業種や業態の課題に応じた戦略のロジックモデルを構築し提供することができれば,中小企業にも受け入れやすく役に立つものになると主張がなされた。

■■報告者・司会者のご協力のおかげで,4つの報告をほぼ時間通りに進行することができた。そして,それぞれの報告に対しては活発な質疑応答がなされ,充実した部会研究報告会となった。

2010年度 第2回九州部会開催記

2010年8月 3日|丸田起大 ( 九州大学 )

2010kyusyu2_1.jpg■■日本管理会計学会2010年度第2回九州部会が,2010年7月24日(土)に福岡大学(福岡市城南区七隈)にて開催された(準備委員長:福岡大学教授・古賀勉氏)。今回の九州部会では,関西中部部会からもご参加をいただくなど,20名近くの研究者や実務家の参加を得て,活発な質疑応答が展開された。

■■第1報告では,高梠真一氏(久留米大学)より「デュポン社のコントロール・チャートによる業績評価の展開」と題する研究報告があり,デュポン社における1922年?1923年ごろのコントロール・チャートや関連文書,および1947年に作成されたコントロール・チャートの解説書などの一次史料が具体的に提示され,デュポン・チャート形成初期はまだデュポン・チャートを構成する各指標についての実績値の期間比較や予測値と実績値との比較などがその中心であったことが示され,当初から投資利益率指標を軸とした標準値と実績値の差異分析を中心とする体系的な業績評価制度として確立・運用されたわけではなく,トップ・マネジメント層が会社全体の経営活動の現状の推移や将来の動向を視覚的に常時把握・分析するための仕組みにとどまっていたことが主張された。

2010kyusyu2_2.jpg■■第2報告では,足立俊輔氏(九州大学博士課程)より「米国病院原価計算の一考察―相対価値尺度(RVU)を中心として」と題する報告があり,病院原価計算の各種手法として,診療報酬支払額を基準としたRCC法,標準的等価係数を用いた外部相対価値尺度法であるRVU法,診療行為の相対指標や地域性などの係数を加味した資源準拠相対価値尺度法であるRBRVS基準のRVU法,およびABC(活動基準原価計算)法を具体的な数値例を示しながら比較し,多くの論者によってそれぞれの長所・短所が主張されているが,診療報酬支払方式との連動性,データベース構築コスト,資源消費の同質性,および政府の役割などを多面的に考慮しながら,制度の選択が行われる必要があることが主張された。

■■第3報告では, 高野学氏(西南学院大学)より「価格計算目的が『原価計算基準』に組み入れられた理由」と題する研究報告があり,我が国の原価計算基準の形成過程について,制定作業が開始された1950年から「原価計算基準(訂正案)」が公表された1961年3月までは原価計算の目的として掲げられていなかった価格計算目的が,1962年8月の「原価計算基準(案)」で突如として加えられ1962年11月の制定を迎えることになった経緯について,基準の制定作業を担当した大蔵省企業会計審議会第四部会のメンバーたちの論文や座談会記録を詳細に検討し,第四部会メンバーの一部が同じく関与して日本生産性本部が1957年に制定した「中小企業のための原価計算」の影響,および1960年ごろから防衛装備品の国産化を本格化させた防衛庁の契約価格算定のための個別的な準則の拠り所となるべく制定直前の原価計算基準案に急きょ配慮を加えた可能性などを指摘された。

■■報告会終了後には開催校のご厚意で懇親会も開催され,実りある交流の場となった。次回の第3回部会は11月に九州産業大学にて開催予定である。

2010年度 第1回九州部会 開催記

2010年5月10日|丸田起大(九州大学 )

■■日時 2010年4月24日(土)13:30?
■■場 所 西南学院大学

2010kyusyu1_1.png■■日本管理会計学会2010年度第1回九州部会が,2010年4月24日(土)に西南学院大学(福岡市早良区西新)にて開催された(準備委員長:西南学院大学准教授・高野学氏)。今回の九州部会には,関西中部部会からもご報告・ご参加をいただくなど,30名近くの研究者や実務家の参加者があった。報告会終了後には定例の部会総会も開催されたが,九州部会事務局長の大下丈平氏(九州大学教授)より,今大会が記念すべき通算30回目となった九州部会の第1回からの開催記録リストが配付され,今後の九州部会のますますの発展への協力が呼びかけられた。

■■第2報告では,和田伸介氏(大阪商業大学)より,「IFRSと管理会計の関連性について―ドイツ管理会計士の役割を中心に―」と題する報告があり,2007年からIFRSの強制適用が始まっているドイツの状況について,公正価値評価やマネジメントアプローチの導入が財務会計だけではなく管理会計にも与える影響をめぐるドイツでのケーススタディや実態調査の結果が示され,財務会計上の製作原価概念の再定義や原価計算上における減価償却費や利子の非算入などドイツの伝統的な原価概念への影響,ドイツにおけるコントローラーの機能として財務報告への情報提供者としての役割の追加,そのような影響下での限界計画原価計算の再評価の動き,コントローラー制度の英独比較などが紹介された。

2010kyusyu1_2.png■■第3報告では,北村浩一氏(鹿児島大学)より,「マッキンゼー『予算統制』のbudgetary controlと企業予算システムの展開・発展」と題する報告があり,予算管理研究の古典である1922年のJ.O.MckinseyのBudgetary Controlの精緻な解読の結果,マッキンゼーの意図していた当時の予算管理は,予算と実績の差異分析などの予算統制過程を前提としておらず,当時の米国連邦政府予算制度を参考にして,財務管理を主眼とした予算の編成過程のコントロールを体系化しようとするものであったことを明らかにしたうえで,マッキンゼー学説の再評価を出発点とした企業予算システムの新たな発展段階モデルの構想が提示された。

■■第4報告では,浦田隆広氏(久留米大学)より,「品質原価計算の構造と機能」と題する報告があり,米国における1970年代からの品質原価計算の研究や実務の展開について,計算技術的側面だけではなく社会経済的背景を含めた検討の必要性が強調され,Xerox社,Texas Instrument社,Westinghouse Electric社,H.J.Heinz社,Union Pacific鉄道などの詳細な事例分析にもとづいて,市場構造の変化による企業業績の変化やそれに対して品質原価計算という経営技術に期待された機能などが明らかにされ,品質原価計算は歴史的産物でありもはやその歴史的使命を終えつつあることが主張された。

■■各報告に対して活発な質疑応答がなされたにも関わらず,報告者・司会者のご協力のおかげで,4つの報告をほぼ時間通りに進行することができ,また報告会終了後には開催校のご厚意で懇親会も開催され,実りある交流の場となった。

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